令和7年(2025年)、区分所有法の改正にあわせて、国土交通省の「マンション標準管理規約」も改正されました。マンションの高経年化や区分所有者の高齢化、海外居住者の増加といった課題に対応するための見直しであり、多くの管理組合にとって現行の管理規約の点検・改正が必要になります。今回は、改正のポイントを表を交えてわかりやすく整理します。
改正の背景
築年数の経過したマンションが増える一方、区分所有者の高齢化や海外転出などにより、総会の開催や意思決定が難しくなるケースが増えています。今回の区分所有法改正およびマンション標準管理規約の改正は、こうした状況に対応し、老朽化したマンションの建替えや大規模修繕をより円滑に進められるようにすることを主な目的としています。
総会の決議要件はどう変わったか
今回の改正では、総会の決議要件について「区分所有者総数」を基準とする部分から、「総会に出席した区分所有者」を基準とする部分へと変更された点が大きな特徴です。主な決議類型ごとの変更点は次のとおりです。
| 決議の種類 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 総会の基本定足数 | 議決権総数の半数以上 | 議決権総数の過半数 |
| 規約変更等の特別決議(定足数) | 組合員総数・議決権総数を基準 | 組合員総数及び議決権総数の各過半数の出席 |
| 規約変更等の特別決議(可決要件) | 組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上 | 出席組合員及びその議決権の各4分の3以上 |
| 耐震化・バリアフリー化等特定の共用部分の変更 | 組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上 | 出席組合員及びその議決権の各3分の2以上 |
| 建替え決議 | 組合員総数及び議決権総数の各5分の4以上 | 各5分の4以上(客観的な事由がある場合は4分の3以上に緩和) |
| 敷地売却等のマンション再生決議 | (従来の標準管理規約に規定なし) | 各5分の4以上(客観的な事由がある場合は4分の3以上に緩和) |
出席者を基準とする決議に変更されたことで、総会に出席する区分所有者が限られる場合でも決議を成立させやすくなる一方、定足数の考え方も変わっているため、議事運営には注意が必要です。
総会招集通知に関する変更
通常の招集通知は、これまでどおり会議の日の2週間前まで(建替え決議等を行う場合は2か月前まで)に発する必要があり、この点に変更はありません。一方で、緊急を要する場合に理事会の承認を得て通知期間を短縮できる規定については、次のように見直されています。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 通常の招集通知期間 | 会議の日の2週間前まで | 変更なし(会議の日の2週間前まで) |
| 緊急時に理事会の承認で短縮できる期間 | 5日間を下回らない範囲で短縮可 | 1週間を下回らない範囲で短縮可 |
あわせて、招集通知には議案の要領を具体的に記載することが必須化され、多数決要件の緩和規定を用いる場合はその旨と理由を通知することも求められるようになりました。
新設される主な制度
今回の改正では、次のような制度が新たに設けられています。
国内管理人制度:海外に居住する区分所有者が国内の管理人を選任することで、総会招集通知の受領や議決権の行使、管理費・修繕積立金の支払いなどを国内で代行できるようになりました。
所在等不明区分所有者の除外手続き:連絡先が不明な区分所有者について、理事長が理事会決議を経て裁判所に申し立てることで、総会の決議において母数から除外できる制度が新設されました。
専有部分の保存行為の実施請求:漏水事故などで共用部分に影響が及んでいる場合、管理組合が専有部分への立入りだけでなく、必要な保存行為そのものを実施するよう請求できることが明確化されました。
共用部分の損害賠償請求権の一元的な行使:共用部分に生じた損害について、理事長が区分所有者だけでなく旧区分所有者も含めて一括して賠償請求できるようになりました。区分所有権の譲渡があった場合でも、原則として理事長による請求権が引き継がれます。
財産管理制度:区分所有者が不明な専有部分や、管理が適切に行われていない専有部分(ゴミの放置や配管の腐食を放置しているケースなど)について、裁判所が選任した管理人が管理・処分を行う制度が整備されました。
修繕積立金の使途拡大
修繕積立金を充当できる範囲も広がりました。建替えや敷地売却などマンション再生に向けた調査・設計段階の費用、修繕積立金の管理・運用にかかる費用(帳票発行手数料や保証料など)、LED化や防犯性能の向上といった「改良」工事の費用などにも充当できることが明確化されています。
管理組合役員に関する見直し
なりすましによる役員就任を防ぐため、役員や専門委員への就任時に本人確認を行うことが望ましいとされました。また、理事本人が総会や理事会に出席できない場合に、配偶者や一親等の親族が代理出席できる「職務代行者」の仕組みも整理されています。役員の欠格条項についても見直され、これまであった「精神の機能障害」を理由とする要件は削除されました。
管理組合として今後どう対応すべきか
現行の管理規約のまま総会運営を続けた場合、改正後の区分所有法の内容と抵触し、決議が無効と判断されるおそれがある部分もあります。管理組合としては、まず自マンションの現行規約と改正後の標準管理規約を比較し、変更が必要な箇所を洗い出したうえで改正案を作成し、区分所有者への事前説明会を経て、総会の特別決議によって規約を改正していく流れが基本となります。
まとめ
今回のマンション標準管理規約の改正は、総会の決議要件や招集通知、役員に関する規定など、管理組合の運営に関わる多くの項目に及んでいます。規約の見直しは区分所有者への説明や特別決議など時間を要する手続きでもあるため、早めの準備が大切です。管理規約の見直しやマンション管理組合の運営に関してご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
