合同会社に社員がお金を入れる。このとき「増資したのだから登記が必要」と考えられがちですが、必ずしもそうではありません。出資を受けても登記をしなくてよい形にできます。会社が自分で決められる部分があるからです。
登記が動くのは「資本金の額」が変わったときだけ
合同会社について登記される項目は法律で決まっています。社員が何人いて、それぞれいくら出資したかは、そもそも登記されません。
| 登記される | 目的、商号、本店・支店の場所、資本金の額、業務を執行する社員の氏名、代表社員の氏名と住所 |
| 登記されない | 社員の氏名(業務執行社員・代表社員を除く)、社員ごとの出資の価額 |
登記された内容が変わったときは、2週間以内に変更の登記をしなければなりません。裏を返せば、出資を受けても資本金の額が変わらなければ、登記する項目は何も動かないということです。
出資額のうちいくらを資本金にするかは、会社が決める
ここが分かれ道です。合同会社では、社員が払い込んだ金額の範囲内で、会社が「資本金にいくら計上するか」を決められます。資本金にしなかった分は、資本剰余金という別の項目になります。会社に入るお金の総額は同じで、置き場所が変わるだけです。
300万円の追加出資を受けた場合で比べてみます。
| 計上の仕方 | 資本金の増加 | 変更登記と登録免許税 |
|---|---|---|
| 全額を資本金へ | 300万円 | 必要/3万円 |
| 半分ずつ | 150万円 | 必要/3万円 |
| 全額を資本剰余金へ | 0円 | 不要/0円 |
資本金を増やす登記の登録免許税は、増えた資本金の0.7%です。ただし計算結果が3万円に満たないときは3万円かかります。増資額が430万円ほどまでは、いくらであっても一律3万円という形になります。
資本金を増やさないほうが都合のよい場面
登録免許税が浮くこと以外にも理由があります。税務では資本金の額そのものを基準に扱いが変わる制度があり、金額のラインをまたぐと負担が変わってしまうためです。
| 資本金のライン | 超えると変わること |
| 1,000万円 | 設立まもない法人の消費税の納税義務の免除が使えなくなる(事業年度が始まる日の資本金で判定) |
| 1億円 | 税務上の中小法人から外れる。年800万円以下の所得に使えていた軽減税率(15%)がなくなって全額23.2%になり、交際費の年800万円の枠も使えなくなる |
資金は入れたいが資本金の額は動かしたくない、という場面で資本剰余金への計上が効いてきます。消費税の判定の考え方は国税庁のページでも確認できます。
住民税の均等割だけは資本剰余金でも避けられない
ひとつ注意が要ります。法人住民税の均等割は、資本金の額ではなく「資本金等の額」で判定されます。資本金等の額には、資本金に入れなかった出資分も含まれます。つまり資本剰余金に計上しても、均等割の区分は下がりません。
| 資本金等の額 | 均等割の年額(従業者50人以下・標準税率) |
| 1,000万円以下 | 7万円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 18万円 |
赤字でも毎年かかる税金です。追加出資で資本金等の額が1,000万円を超えると、以後は年11万円の差が続きます。税率は自治体によって異なることがあります。登記と登録免許税は避けられても、均等割への影響は出資した時点で決まると考えてください。
登記が要らなくても、社内の手続きは要る
ここを飛ばすと後で困ります。合同会社の定款には、社員の氏名と住所、それぞれの出資の価額を書くことになっています。出資を受ければその記載が変わるので、定款の変更が必要です。定款の変更には、原則として社員全員の同意が要ります。
同意書と、払い込みがあったことが分かる書類は必ず残してください。登記をしないぶん、社内の書類が唯一の記録になります。
逆に、登記が必要になるとき
- 出資の一部でも資本金に計上したとき
- 出資した人が業務を執行する社員や代表社員になるとき(この場合は役員にあたる部分の登記が別に必要で、その分の登録免許税もかかります)
- 後から資本剰余金を資本金に振り替えたとき
最後の点は見落としやすいところです。いったん資本剰余金に入れておいて後で資本金に振り替えると、そのときに登記と登録免許税が発生します。先送りにはなっても、なくなるわけではありません。
追加出資の話が出たら、お金が動く前に「資本金にするかどうか」を決めておいてください。入金後に計上の仕方を変えるのは手間がかかります。なお、どちらがよいかは会社の状況や今後の資金計画によって変わりますので、個別に確認したうえで進めてください。
