宗教法人も、職員への給与の支払いや、外部への報酬の支払いを行う場合には、所得税の源泉徴収義務者となります。また、収益事業を行う場合には法人税・消費税の対象にもなります。今回は、宗教法人の会計・税務における基本的なポイントを、表を交えて整理しました。
宗教法人と源泉徴収義務
宗教法人が、役員・職員への給与や退職手当、外部の専門家等への報酬・料金を支払う場合には、支払いのつど所得税を源泉徴収し、国に納付する義務があります。個人の家計と宗教法人の会計は明確に区分する必要があり、職員への無償での居住提供や、法衣の貸与、飲食代の負担なども経済的利益として源泉徴収の対象となる点に注意が必要です。
| 支払いの種類 | 源泉徴収税率の目安 |
|---|---|
| 給与 | 月額表・日額表により計算(扶養親族数に応じて異なる) |
| 退職手当 | 20.42%が目安(勤続年数等により計算方法あり) |
| 報酬・料金(税理士報酬等) | 10.21%(年100万円超の部分は20.42%) |
例えば、月額20万円の給与を支払い、扶養親族が2人いる場合、源泉徴収税額はおおむね7,000円程度となります(実際の金額は税額表により確認してください)。
源泉徴収税の納付期限
源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。納付方法には、e-Taxによる電子納付、金融機関窓口での納付、税務署窓口での納付があります。
常時雇用する職員が10人未満の宗教法人は、税務署に届出をすることで、1月から6月分をまとめて7月10日までに、7月から12月分をまとめて翌年1月20日までに納付する「納期の特例」を利用できます。
収益事業を行う場合の法人税
宗教法人が、不動産賃貸業、物品販売業、飲食店業、駐車場業など、法令で定められた34種類の収益事業に該当する事業を継続して行う場合、その収益事業から生じた所得については法人税が課税されます。境内地での純粋な宗教活動(お布施・戒名料・入場料など)は課税対象になりませんが、収益事業に該当する部分は区分して経理する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人税率 | 19%(所得金額のうち年800万円超の部分は原則の税率) |
| 地方法人税率 | 法人税額の10.3% |
| 申告期限 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
消費税の取扱い
基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合、宗教法人も消費税の申告・納付義務を負います。なお、お布施や戒名料、入信・入会に伴う喜捨金など、対価性のない宗教活動に伴う収入は、そもそも消費税の課税対象外(不課税)となります。一方、土地の貸付けや、宗教教化のための一定の活動、施設の利用料などについては非課税取引とされる場合があります。
| 区分 | 取扱い |
|---|---|
| 消費税率 | 標準10%(軽減税率対象は8%) |
| インボイス制度 | 令和5年10月1日から開始。適格請求書発行事業者の登録が必要 |
| お布施・戒名料など | 不課税(対価性がないため) |
| 土地の貸付け・宗教教化活動など | 非課税となる場合あり |
記録・届出書類のポイント
- 源泉徴収簿を作成し、毎月の給与額と源泉徴収税額を記録する
- 職員から「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出してもらう
- 退職手当を支払う際は「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受ける
- 青色申告を希望する収益事業がある場合は「青色申告承認申請書」を提出する
期限に遅れた場合の注意点
源泉徴収税額の納付が遅れたり、納付額に不足があったりした場合には、不納付加算税や延滞税が課されることがあります。日頃から納付期限を管理し、会計処理を適切に行うことが重要です。
宗教法人の会計・税務は、収益事業の有無や規模によって取扱いが異なります。具体的な判断に迷う場合は、専門家にご相談ください。
