宗教法人は、宗教法人法に基づき、事務所への書類の備付けや、規則変更・財産処分等の際の所轄庁への手続、信者への公告など、一般の法人とは異なる独自の事務運営が求められます。東京都生活文化局が公表している「宗教法人事務運営の手引」(令和7年4月)をもとに、宗教法人の運営に関わる主な手続を図表を交えて整理しました。なお、東京都以外を所轄庁とする法人は、詳細な取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。
1.事務所に備え付けるべき書類(毎年の必須対応)
宗教法人は、法人の状況を的確に把握するため、次の書類・帳簿を常に事務所に備え付けなければなりません(宗教法人法第25条)。このうち一部は、毎会計年度終了後4か月以内に、その写しを所轄庁(東京都)に提出する必要があります。
| 書類名 | 所轄庁への提出 | 内容 |
|---|---|---|
| 役員名簿 | 必須 | 代表役員・責任役員等の役員名簿 |
| 財産目録 | 必須 | 会計年度末現在の全資産・全負債の内容を種類・性質ごとに記載 |
| 収支計算書 | 原則必須(※) | 会計年度のすべての収入・支出の明細、予算との対比 |
| 貸借対照表 | 作成している場合のみ | 資産・負債を区分・配列して財政状況を明らかにする書類 |
| 境内建物に関する書類 | 作成している場合のみ | 財産目録に記載のない境内建物(賃貸借物件等)がある場合に必要 |
| 事業に関する書類 | 該当する場合 | 公益事業・収益事業を行う場合の事業内容、収支決算額等 |
(※)収益事業以外の事業を行っておらず、年間収入が8千万円以内である場合は、当分の間、収支計算書を作成しないことができます。
役員名簿や財産目録等の作成・備付けを怠ったとき、または虚偽の記載をしたときは、代表役員等が10万円以下の過料に処せられることとされています(宗教法人法第88条第1項第4号)。備付けだけでなく、期限内の所轄庁への提出も忘れずに行う必要があります。
2.規則を変更するときの手続
事務所の移転、役員定数の変更、収益事業の開始など、法人規則の内容を変更する場合には、所轄庁の認証を受ける必要があります(宗教法人法第27条)。手続は、規則に定める機関の議決を経たうえで、次の順序で進みます。
| 手続の流れ | 内容 |
|---|---|
| ①責任役員会の議決 | 議事の経過・議決内容を明記した議事録を作成し、出席者が署名または押印 |
| ②総会・総代会等の同意 | 規則に定めのある場合に必要。同意内容を同意書にまとめる |
| ③包括団体の承認 | 包括団体がある場合に必要 |
| ④公告 | 公告の必要がある場合に、規則に定める方法で実施 |
| ⑤規則変更認証申請 | 法人から所轄庁へ申請 |
| ⑥審査(現地調査) | 事務所移転等の場合のみ、所轄庁が現地調査を実施 |
| ⑦認証書交付 | 所轄庁から法人へ認証書及び認証規則を交付 |
| ⑧登記 | 登記内容に変更がある場合、認証書交付後2週間以内に法務局で変更登記 |
| ⑨登記事項変更届の提出 | 変更登記後、履歴事項全部証明書を添えて所轄庁へ届出 |
3.財産の処分・境内建物の新築などは事前の「公告」が必要
宗教法人法第23条は、信者その他の利害関係人に対して法人運営の実態を明らかにするため、次のような行為を行う際に事前の公告を義務付けています。公告後は、内容によって1か月または2か月の「据置期間」(信者等が意見を述べるための期間)を置く必要があります。
| 公告を要する場合 | 据置期間 |
|---|---|
| 設立 | 1か月 |
| 財産の処分・担保の提供(抵当権の設定) | 1か月 |
| 借入・保証 | 1か月 |
| 境内建物の新築等 | 1か月 |
| 境内地の著しい模様替 | 1か月 |
| 境内建物・境内地の用途変更 | 1か月 |
| 規則変更(被包括関係の設定・廃止のみ) | 2か月 |
| 合併・被包括関係の設定廃止を伴う合併 | 2か月 |
| 解散 | ― |
公告は、原則として代表役員が行い、公告文と、掲示の状況を撮影した写真等を添えた公告証明書(信者その他の利害関係人3名以上による確認・署名が必要)を作成のうえ、法人内に保管します。なお、不動産貸付業等の事業を開始する場合、主要な境内建物や境内地の目的外利用に当たらないときでも、長期の賃貸借は財産処分として公告が必要になる場合があるため注意が必要です。
4.登記事項に変更があったときの届出
代表役員の交代など登記事項に変更が生じた場合は、登記後遅滞なく所轄庁へ届け出る必要があります(宗教法人法第9条)。届出事項によって、登記前に所轄庁の規則変更認証が必要なものと、不要なものがある点に注意してください。
| 区分 | 主な該当事項 | 登記前の所轄庁認証 |
|---|---|---|
| 代表役員変更届 | 代表役員(代務者を含む)の新任 | 不要(登記完了後に届出) |
| 登記事項変更届 | 目的・名称の変更、事務所の変更、包括団体の変更、境内建物等の処分・担保手続の変更、解散事由の変更、公告方法の変更、事業の開始・変更 | 必要(規則変更認証が先行) |
| 登記事項変更届 | 代表役員の氏名・住所・資格の変更、基本財産の総額の変更、礼拝用建物及び敷地の登記 | 不要(登記完了後に届出) |
5.境内地・境内建物の登録免許税免除を受けるには
境内地・境内建物を新たに登記する際、それが宗教法人法第3条に規定する境内地・境内建物に該当することについて所轄庁の証明を受けると、登録免許税の免除を受けることができます。証明申請の手続の流れは、規則変更の場合と同様に、責任役員会の議決から始まり、必要に応じて総会・総代会の同意、包括団体の承認、公告を経て、所轄庁へ証明申請を行います。申請書類審査の後、専ら宗教法人の用に供されていることを確認するための現地調査が行われ、証明書交付を受けたうえで法務局にて登記します。
規則変更や財産処分、境内建物の新築などは手続に一定の期間を要するため、計画段階から余裕をもって準備を進めることが重要です。宗教法人の事務運営や税務についてご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
出典:東京都生活文化局都民生活部管理法人課「宗教法人事務運営の手引」(令和7年4月)
