令和5年(2023年)に成立した改正私立学校法(令和5年法律第21号)により、学校法人のガバナンス体制が大きく見直されます。施行日は令和7年(2025年)4月1日です。今回は文部科学省が公表している解説資料をもとに、改正の目的や主な変更点、対象となる学校法人、必要な準備手続きについてまとめました。
改正の目的とガバナンス改革の基本的な考え方
近年、一部の学校法人において不祥事が発生したことなどを背景に、私立学校の自主性を尊重しつつ、公共性の高い法人としてふさわしいガバナンス体制を構築することが求められました。改正法の基本的な考え方は、理事会による「執行」と評議員会等による「監視・監督」を明確に分離することにあります。理事会と評議員会は対立関係ではなく、協働しながら互いにけん制し合う関係として位置づけられ、理事会が意思決定機関、評議員会は法人運営を監視する機能を持つ諮問機関として整理されています。
対象となる学校法人
改正法の規律は、法人の規模や活動範囲に応じて内容が異なります。特に規律が強化されるのは「大臣所轄学校法人等」で、収入10億円以上または負債20億円以上、かつ3以上の都道府県で事業を行う学校法人などが該当します。それ以外の学校法人(知事所轄学校法人等)にも、役員・評議員に関する見直しなど共通の規律が適用されます。
主な制度変更点
| 項目 | 主な改正内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 役員体制 | 親族等特殊関係者の就任に人数制限。理事と評議員の兼職を原則禁止。監事の選任に評議員会の同意が必要 | すべての学校法人 |
| 会計監査 | 会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置を義務化 | 大臣所轄学校法人等 |
| 決算・会計 | 計算書類の作成期限を会計年度終了後2ヶ月以内から3ヶ月以内に延長。会計帳簿の保存期間を10年間と明確化 | すべての学校法人 |
| 情報公開 | 計算書類等を広く一般に閲覧可能とすることを義務化 | 大臣所轄学校法人等 |
| 意思決定 | 評議員会の決議事項・決議要件を整理。役員等の選任・解任手続の規律を強化 | すべての学校法人 |
| 罰則 | 特別背任罪、贈収賄罪、目的外投機取引に関する罪を新設 | すべての学校法人 |
1. 役員体制の見直し
- 理事・監事・評議員のそれぞれの選任方法や資格要件が見直され、親族等特殊関係者の理事・監事・評議員への就任について人数制限が設けられます。
- 理事と評議員の兼職が原則として禁止され、役職の分離が図られます。
- 監事の選任には評議員会の同意が必要となるなど、監事の独立性強化が図られます。
2. 会計監査体制の充実
大臣所轄学校法人等については、会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置が義務化され、財務情報の信頼性を高める体制が求められます。
3. 決算・会計等の規定整備
- 計算書類の作成期限が、会計年度終了後2ヶ月以内から3ヶ月以内に延長されます。
- 会計帳簿の保存期間が10年間と明確化されます。
- 大臣所轄学校法人等については、計算書類等を広く一般に閲覧可能とすることが求められ、財務情報の透明性が高まります。
4. 意思決定プロセスの改革
評議員会の決議事項や決議要件が整理され、重要な意思決定について評議員会の関与がより明確になります。役員等の選任・解任手続きについても、恣意的な運用を防ぐための規律が強化されます。
5. 罰則の新設
特別背任罪、贈収賄罪、目的外投機取引に関する罪など、法人運営の適正性を担保するための罰則規定が新たに設けられます。
施行時期と経過措置
改正法の施行日は令和7年(2025年)4月1日です。ただし、評議員の構成要件などについては経過措置が設けられており、大臣所轄学校法人等は令和8年度の定時評議員会終結時まで、その他の学校法人は令和9年度までに新制度の要件を満たせばよいこととされています。
必要な手続きと準備スケジュール
- 令和6年度中:改正内容や関連する政省令の周知、寄附行為(定款に相当)変更の検討
- 令和7年度:寄附行為変更の認可申請、役員・評議員の選任方法の見直し、内部規則の整備、会計監査人の選任(対象法人)
- 令和7年度の定時評議員会終結時まで:新制度の構成要件(親族等特殊関係者の人数制限、理事・評議員の兼職禁止など)を満たす体制への移行
今回の改正のポイント
- 理事会(執行)と評議員会(監視・監督)の役割分担が明確化される
- 親族等特殊関係者の役員・評議員への就任に人数制限が設けられる
- 理事と評議員の兼職が原則禁止となる
- 大臣所轄学校法人等は会計監査人の設置が義務化される
- 計算書類の作成期限が2ヶ月から3ヶ月に延長される
- 罰則規定が新設され、法人運営の適正性がより強く担保される
今回の改正は、学校法人の寄附行為の変更や役員・評議員の体制見直しなど、実務面で対応が必要な事項が多岐にわたります。準備には一定の期間を要しますので、経過措置の期限を見据えて早めの検討をお勧めいたします。学校法人のガバナンス体制の見直しについてお悩みの際は、お気軽に当事務所までご相談ください。
出典:文部科学省「私立学校法の改正について」https://www.mext.go.jp/content/20250325-mxt_sigakugy-000021776_001.pdf
