非上場企業の相続税・贈与税を考えるうえで欠かせない「取引相場のない株式の評価」について、国税庁は令和8年4月から有識者会議を開催し、約60年ぶりとなる抜本的な見直しの検討を進めています。2026年8月20日に公表された第5回会議資料では、国税庁が考える見直しの方向性を示す「たたき台」が示されました。本記事では、その内容を図表を交えてわかりやすくご紹介します。
見直しが検討されている背景
この見直しは、令和6年11月の会計検査院の指摘を受けたものです。現行の評価方式には、会社の規模によって評価額に大きなばらつきが生じており、特に規模の大きな会社ほど相対的に低い評価額になりやすいこと、配当還元方式の還元率が近年の低金利水準と比べて相対的に高いおそれがあることなどが問題視されていました。
現行の評価方式が抱える課題
| 評価方式 | 指摘されている課題 |
|---|---|
| 類似業種比準方式 | 理論的な根拠や実証的な裏付けに乏しく、上場企業の株価をもとにしたモデルを非上場の中小企業に当てはめることの妥当性が疑問視されている |
| 純資産価額方式 | 会社が解散・清算することを前提とした評価であり、事業を継続する会社の実態を反映できていない |
| 配当還元方式 | 適用要件が濫用されやすく、株主構成を操作することで評価額を最大で約98%圧縮できてしまうケースがある |
見直しの方向性
- 会社の規模によって評価方式を使い分ける「規模別区分」を廃止し、幅広い会社を共通の方式で評価する
- 会社の収益力を重視する「インカムアプローチ」を評価の主軸とし、なかでも帳簿上の純資産に数年分の超過収益の価値を加減する「残余利益方式」の採用が検討されている
- 純資産価額方式は原則的な評価方式ではなく、清算を予定している会社など「特定の評価会社」向けの方式として位置づけを見直す
- 配当還元方式は廃止せず、配当を受け取る以外に利益を期待できない少数株主向けの例外的な方式として、適用範囲を見直したうえで存続させる
租税回避への対応
資料では、現行制度を悪用した節税スキームへの対応方針も示されています。会社規模を操作して評価額を下げる手法には単一の評価方式の導入で、一時的な利益・損失を作為的に生じさせる手法には非経常的な損益を修正したうえでの評価で、グループ会社を使って評価を圧縮する手法には完全支配関係にあるグループ全体としての評価で、それぞれ対応する方向性が示されています。
今後の見通し
今回の資料は、あくまで有識者会議での議論のたたき台であり、具体的な施行時期は示されていません。今後さらに議論が重ねられ、最終的な結論が取りまとめられる見込みです。非上場企業のオーナー様にとっては、将来の株式評価額や相続税負担に直結する重要なテーマですので、当事務所でも今後の議論の動向を注視してまいります。
