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非居住者

非居住者が相続する場合の国外転出(相続)時課税と4か月以内の準確定申告

日本国内に住む方が亡くなり、その相続人の中に海外に住む「非居住者」がいる場合、通常の相続税の申告とは別に、思いがけない所得税の申告義務が発生することがあります。これは「国外転出(相続)時課税」と呼ばれる制度によるもので、対応が遅れると税務上大きな不利益を被るおそれがあります。

国外転出(相続)時課税制度とは

この制度は、一定額以上の有価証券等を保有していた方(被相続人)が亡くなり、海外に住む非居住者である相続人がその資産を相続や遺贈によって取得した場合に、相続開始のタイミングでその資産を時価で譲渡したものとみなし、含み益部分に対して被相続人の所得税が課税される仕組みです。対象となるのは、次のいずれにも当てはまるケースです。

  • 相続開始の時点で、被相続人が保有する株式や投資信託などの有価証券、未決済の信用取引・デリバティブ取引の合計額が1億円以上であること
  • 相続開始前10年以内に、被相続人が国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年を超えていること
  • 相続や遺贈により、非居住者である相続人等がこれらの対象資産の全部または一部を取得すること

なぜ「相続」なのに所得税がかかるのか

実際には資産を売却していないのに所得税がかかると聞くと、違和感を覚える方も多いはずです。この制度は、含み益のある有価証券等が海外の非居住者へ相続によって渡ってしまうと、その後日本が値上がり益に課税する機会を失ってしまうことを防ぐために設けられています。相続開始の時点でいったん時価で譲渡があったとみなし、その含み益部分を被相続人の最後の所得として課税してしまう、という考え方です。

相続開始から4か月以内に準確定申告が必要

この制度の対象となる場合、相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過する日の前日までに、被相続人のその年1月1日から死亡日までの所得に、この制度による所得を含めて準確定申告を行い、あわせて納税まで済ませる必要があります。

通常の相続税の申告期限は相続開始を知った日から10か月ですが、この準確定申告の期限はその半分以下しかありません。相続税の申告準備に気を取られているうちに、この4か月という短い期限をうっかり過ぎてしまうケースは少なくないため、非居住者の相続人がいる場合は特に注意が必要です。

期限内に手続きしないと「納税猶予」が使えなくなる

実際に売却していない資産の含み益に対して、すぐに現金で税金を納めるのは大きな負担です。そこで、一定の手続きを行えば、相続開始の日から5年間(届出により最長10年間)納税を猶予できる特例が用意されています。ただし、この猶予を受けるためには、非居住者である相続人等の全員が納税管理人を届け出ること、申告書に猶予の適用を受ける旨を記載すること、対象資産の明細書などの必要書類を添付すること、そして猶予を受ける税額に見合う担保を提供することが必要で、これらはすべて準確定申告書の提出期限、つまり4か月以内に済ませなければなりません。

裏を返せば、4か月の期限を過ぎてしまうと、この納税猶予を選ぶ余地そのものがなくなってしまいます。その結果、実際には資産を一切売却していないにもかかわらず、含み益に対する所得税を一括で納付しなければならない事態になりかねません。加えて、申告自体が遅れれば無申告加算税や延滞税といったペナルティの対象にもなります。

対応4か月以内に準確定申告・必要手続きを完了4か月の期限を徒過
申告義務期限内に適正に履行無申告加算税・延滞税等のリスク
納税猶予の選択要件を満たせば5年(最長10年)猶予可能猶予の選択余地がなくなる
納税資金猶予中は一括納付を回避できる含み益分を一括で現金納付する必要

まとめ

相続人の中に海外在住の非居住者がいる相続では、相続税の申告とは別に、国外転出(相続)時課税に基づく準確定申告という手続きが必要になる場合があります。対象資産の把握や評価、納税資金の準備、納税猶予の要否判断までを4か月という限られた期間で行う必要があるため、非居住者が相続人に含まれる可能性がある場合は、早い段階で専門家に相談し、期限を意識した準備を進めることをおすすめします。

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