学校法人の決算で毎年かならず出てくるのが、第4号基本金です。金額そのものは前年度の決算額から機械的に決まりますが、特例ア・イの判定や、知事所轄学校法人の特例をどう扱うかで組入額は変わります。さらに、計算した額に相当する資金を持っていなければ、貸借対照表に注記が必要になります。
このページでは、第4号基本金の考え方と計算の順序を整理したうえで、前年度の事業活動収支計算書の数字を入れるだけで組入額・取崩額まで出る計算表を用意しました。令和7年度から適用されている学校法人会計基準にあわせた条番号で記載しています。
第4号基本金とは
学校法人会計基準第13条第1項第4号は、「恒常的に保持すべき資金として別に文部科学大臣の定める額」を基本金に組み入れるものとしています。これが第4号基本金です。
第1号から第3号までの基本金が、固定資産や基金といった「もの」に着目しているのに対して、第4号基本金は「学校を回していくために手元に置いておくべき運転資金」に着目しています。おおむね1か月分の運営費にあたる金額を、使ってしまわないように純資産の中で区分しておく、という趣旨です。
金額は法人の判断で決めるものではなく、文部大臣裁定「学校法人会計基準第13条第1項第4号に規定する恒常的に保持すべき資金の額について」(昭和62年8月31日裁定、令和7年2月12日最終改正)にしたがって計算します。
恒常的に保持すべき資金の額の計算
計算に使うのは前年度の事業活動収支計算書の決算額です。当年度の数字ではありません。次の4つを足して12で割ります。
| 計算に入れるもの | そこから除くもの | 区分 |
|---|---|---|
| 人件費 | 退職給与引当金繰入額、退職金 | 教育活動収支 |
| 教育研究経費 | 減価償却額 | 教育活動収支 |
| 管理経費 | 減価償却額 | 教育活動収支 |
| 借入金等利息 | — | 教育活動外収支 |
合計を12で割った額が「計算額」です。100万円未満の端数があるときは、切り捨てることができます。切り捨てるかどうかは任意ですが、毎年ばらばらにするものではありませんので、法人として扱いを決めておきます。
除く項目を見ると、支出の中から「毎月出ていく現金」だけを取り出そうとしていることがわかります。減価償却額と退職給与引当金繰入額は現金が動きませんし、退職金は毎年同じように出るものではありません。だから外す、という組み立てです。
特例ア・イ ― 前年度の額と比べる
計算額をそのまま使うとは限りません。前年度の「保持すべき資金の額」と比べて、次のように扱います。
| 計算額 ÷ 前年度の額 | 当年度の保持すべき資金の額 | 義務か任意か |
|---|---|---|
| 80%未満 | 計算額(差額は取崩しの対象) | — |
| 80%以上100%未満(特例ア) | 前年度の額をそのまま使う | 義務(「とする」) |
| 100% | 前年度と同額 | — |
| 100%超120%以内(特例イ) | 前年度の額をそのまま使ってもよい | 任意(「できる」) |
| 120%超 | 計算額(差額を組み入れる) | — |
ポイントは、特例アが義務で、特例イが任意だということです。人件費が少し減って計算額が前年度を下回っても、80%以上あるなら取り崩しません。逆に、少し増えて120%以内におさまっているときは、前年度の額を据え置くか、計算額まで組み入れるかを法人が選べます。
特例イを使うと、その年の基本金組入額は増えませんが、翌年度以降の判定の基準となる「前年度の額」も据え置かれます。毎年の判断ではなく、方針として決めておくほうが説明しやすくなります。
会計監査人非設置知事所轄学校法人の特例(第49条)
学校法人会計基準第49条は、会計監査人非設置知事所轄学校法人について、第4号基本金に相当する金額の全部又は一部を基本金に組み入れないことができると定めています。幼稚園や専修学校だけを設置している小規模な法人などが該当します。
ここは令和7年度から適用されている基準で変わった部分です。従前は「知事所轄学校法人」であれば使えた特例ですが、現在は会計監査人を設置していない知事所轄学校法人に限られます。会計監査人を置いている法人は、知事所轄であっても原則どおり組み入れることになります。
なお、これは「組み入れなくてよい」という話であって、「資金を持たなくてよい」という話ではありません。組み入れない選択をしても、運転資金をどれだけ持っているかという課題は残ります。
資金を保有していないときは注記が必要
学校法人会計基準第40条第7号は、第13条第1項第4号に掲げる金額に相当する資金を有していない場合には、その旨及び対策を注記しなければならないとしています。基本金として区分はしたけれど、見合いの資金が手元にない、という状態を外から見えるようにする規定です。
ここでいう資金は、当年度末の貸借対照表の次のものです。
- 現金預金
- 現金預金に類する金融商品(有価証券など)
- 第4号基本金に対応した特定資産
注意したいのは最後の行です。特定資産であれば何でもよいわけではなく、第4号基本金に対応した名称を付けたものに限られます。退職給与引当特定資産や施設設備引当特定資産は、金額が大きくても数えられません。
不足しているときの注記には、その旨だけでなく「対策」も書きます。いつまでにどう手当てするのかを、経営改善の計画と結びつけて書くことになります。
学校法人でつまずきやすい点
| つまずきやすい点 | 確認すること |
|---|---|
| 当年度の決算額で計算してしまう | 使うのは前年度の決算額です。前年度に退職金や一時的な人件費が膨らんでいると、その影響は翌年度の組入額に出ます。 |
| 借入金等利息を教育活動収支に入れている | 計算に使うのは教育活動外収支の借入金等利息です。区分を取り違えると計算額がずれます。 |
| 除く項目を人件費だけで考えている | 教育研究経費・管理経費からも減価償却額を除きます。経費の内訳が取れていないと計算できません。 |
| 特例アを任意だと思っている | 80%以上100%未満は「とする」ですので、取崩しはしません。取り崩してしまうと基本金が過少になります。 |
| 特定資産をまとめて資金に数える | 第4号基本金に対応した特定資産だけが対象です。名称と設定目的を確認します。 |
令和7年度から条番号が変わりました
私立学校法の改正にあわせて学校法人会計基準も改正され、令和7年度から適用されています。第4号基本金まわりの条番号は次のとおり移りました。計算方法と特例ア・イの中身そのものは変わっていません。
| 内容 | 従前 | 現行 |
|---|---|---|
| 第4号基本金への組入れ | 第30条第1項第4号 | 第13条第1項第4号 |
| 組入れの特例 | 第39条(知事所轄学校法人) | 第49条(会計監査人非設置知事所轄学校法人) |
| 資金がない場合の注記 | 貸借対照表の注記 | 第40条第7号 |
第4号基本金 計算表
前年度の事業活動収支計算書の金額と、前年度の保持すべき資金の額を入れると、計算額・特例の判定・当年度末の要組入高・当期の組入額(取崩額)まで表示します。当年度末の現金預金などを入れると、資金の過不足と注記の要否も分かります。
第4号基本金 計算表
恒常的に保持すべき資金の額(基準第13条第1項第4号)/特例の判定/組入れ・取崩し/資金保有状況
根拠規定
学校法人会計基準第13条第1項第4号に規定する恒常的に保持すべき資金の額について(昭和62年8月31日 文部大臣裁定/令和7年2月12日 最終改正)
1 学校法人が学校法人会計基準第13条第1項第4号の規定に基づき、恒常的に保持すべき資金の額は、前年度の事業活動収支計算書における教育活動収支の人件費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除く。)、教育研究経費(減価償却額を除く。)、管理経費(減価償却額を除く。)及び教育活動外収支の借入金等利息の決算額の合計を12で除した額(100万円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てることができる。)とする。
なお、本項により計算した額(以下「計算額」という。)が前年度の保持すべき資金の額を下回るときは、その差額を取崩しの対象としなければならない。
2(特例)
ア 計算額が、前年度の保持すべき資金の額の100分の80以上100分の100未満の場合は、前項の規定にかかわらず、前年度の保持すべき資金の額をもって、当年度の保持すべき資金の額とする。
イ 計算額が、前年度の保持すべき資金の額の100分の100を超えて100分の120以内の場合は、前項の規定にかかわらず、前年度の保持すべき資金の額をもって、当年度の保持すべき資金の額とすることができる。
学校法人会計基準 第49条(基本金組入れに関する特例)
会計監査人非設置知事所轄学校法人は、第13条第1項の規定にかかわらず、同項第4号に掲げる金額に相当する金額の全部又は一部を基本金に組み入れないことができる。
資金の範囲(学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について(通知)令和7年3月27日 6高私参第27号 注記事項記載例)
現金預金、現金預金に類する金融商品(有価証券など)及び第4号基本金に対応した特定資産。その他の特定資産は含まない。
学校法人会計基準 第40条第7号(注記事項)
第13条第1項第4号に掲げる金額に相当する資金を有していない場合には、その旨及び対策を注記する。
特例アは義務(「とする」)、特例イと端数の切捨て、第49条は任意(「できる」)です。この計算表では、任意のものだけを選べるようにしています。
入力内容はこのブラウザにだけ保存されます。
※正確な数値・結果は、かならず専門家にご確認ください。
※当事務所は、この計算結果により生じたいかなる損害も補償致しません。
計算表の使い方
1. 前年度の事業活動収支計算書
前年度決算の金額を円単位で入れます。カンマは入れても入れなくてもかまいません。人件費は総額を①に入れ、そこから除く退職給与引当金繰入額を②、退職金を③に入れます。教育研究経費・管理経費も同じように、総額と減価償却額を分けて入れます。端数処理は既定で「100万円未満を切り捨てる」にしてあります。
2. 特例の判定
前年度の恒常的に保持すべき資金の額(前年度末の第4号基本金の元になった額)を入れると、計算額との比率を出して特例ア・イのどちらに当たるかを判定します。特例イに当たるときだけ、「適用する(前年度額を維持)」を選べるようになります。
3. 会計監査人非設置知事所轄学校法人の特例
第49条の特例を使う法人だけ、「全部組み入れない」または「一部組み入れない」をクリックします。文部科学大臣所轄の法人と、会計監査人を設置している法人は「適用しない」のままにします。あわせて、前年度末の第4号基本金の残高を入れると、当期の組入額(または取崩額)が出ます。
4. 資金の保有状況
当年度末の現金預金と、現金預金に類する金融商品(第4号基本金に対応した特定資産を含みます)を入れます。要組入高に足りていれば「相当する資金あり」、足りなければ不足額と注記が必要である旨を表示します。
入力した内容はお使いのブラウザの中にだけ保存されます。当事務所に送信されることはありません。「計算結果をコピー」をクリックすると、主な項目をテキストで書き出せますので、決算の引継ぎメモや監査の説明資料にそのまま貼れます。
ご注意
この計算表は概算を確かめるためのものです。第4号基本金の金額は、前年度の事業活動収支計算書の区分が正しいことを前提に計算しています。経費の内訳や退職給与引当金の処理、借入金等利息の区分に見直しがあると、金額は変わります。
また、合併や学校の設置・廃止があった年度、会計方針を変更した年度などは、そのまま当てはめられないことがあります。実際の決算・注記にあたっては、計算書類と附属明細書を確認したうえでご判断ください。
第4号基本金の組入額を、決算の前に確認します
第4号基本金は、特例ア・イの判定や第49条の特例の扱いで組入額が変わります。公認会計士・税理士が、前年度の事業活動収支計算書と資金の保有状況を確認したうえで金額を固め、注記の要否までお手伝いします。顧問契約をご検討中の方のご相談も承ります。
